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歩き遍路の装備

歩き遍路の装備については、様々なホームページやブログで紹介されていますので、ここでは、ホテルや旅館を利用して通し打ちを目指す中高年の方への、より実践的な装備解説をしたいと思っています。 (まだ一部が完成していません)

準備する上で第一に考えていただきたいのは、装備の徹底的な軽量化です。軽くするということは、体力の温存に直結し足の故障防止にもつながります。個々の装備品に軽い物を選ぶのはもちろんのこと、余計な物を持って行かないという勇気ある選択が必要になってきます。ただし、遍路の本来の目的である参拝に必要な物品に関しては、軽量よりも使いやすさで選んでいます。水を除いた装備重量5kg以下を目指しましょう。

基本装備

歩き旅のベースとなる靴、ザック、雨具、地図と、その周辺装備のザックカバー・防水パック、サブザック、ヘッドランプについて解説します。

結論から申し上げると、「大部分が平坦・緩勾配の舗装路である1,200kmの遍路道を連続歩行する事に適している靴」は、登山靴でもランニングシューズでもなくウォーキングシューズです。
歩くわけですから至極当たり前の選択なのですが、ウォーキングシューズそのものを履いた経験のある方が少ないせいか、軽登山靴が良いとか、トレランシューズ(トレイルランニング用の靴)が良いとかと言われる方が多いのも事実です。いろいろ情報にも歩き方と靴の関係を書きましたので参考にされて下さい。
ミズノODスペシャルGT ウォーキングシューズの中でオススメできるのが、ミズノODスペシャル(定価 23,000円)です。セミオーダー式のウォーキングシューズで白色の物もあります。
この靴の良さは、スピードウォーク時の剛性の高さと、インソールを含めた履心地の良さと耐久性の高さです。強雨時に水が滲みる事と、スタイリッシュとは言えないデザインを除くと、日本人の足型を使ってるウォーキングシューズの中で1番だと思います。高額ですが、ソールを張替える事ができますので、永い目で見ると決して高くないと思います。ミズノの直営店には各サイズの在庫がありますので、実際に履かれてからお求め下さい。
ここからは、どうして登山靴やトレランシューズがダメなのかというネガティブな話ですので、興味のない方は、次のザックの項へ進んで下さい。
靴1 左写真は、ハイカットのトレッキングシューズ(軽登山靴)です。このようにくるぶしを押さえつけるタイプの靴で長距離を歩くと、足首がうっ血し靴擦れを起こします。そもそも、くるぶしが動かないために歩きにくく、平地になると上部の靴紐を緩める方が多いと思います。そうすると、足首は楽になりますが踵が浮くようになり、一定以上のスピードで歩き続けると足を故障する原因となります。よって、平坦路の多い遍路道には不向きです。
では、右写真のようなローカットのトレッキングシューズはどうかというと、これもソールが硬い物が多く、舗装路が多い遍路道には向かないと思います。 靴2
人間の膝から下の可動部は、足のくるぶしとつま先の2ヶ所です。しかし、トレッキングシューズの多くは、岩稜帯やガレ場などでの安定感を保つためにソールが硬くなっており、その結果、つま先で蹴って進む力が得にくく、ウォーキングシューズと比べて平坦路では足に負担が掛ります。
靴3 左写真のスニーカーは、リーボックのDMXというソールを採用していて、スピードウォークに適している靴です。しかし、歩き遍路の場合、5~10kg程度の荷物を背負っており、この靴のような布製の靴は、剛性不足で安定感に欠けます。よって、筋力が衰えてきている中高年者の場合、歩行中に横ぶれしやすくケガのリスクが増します。
右写真は、最近ブームのトレランシューズです。このタイプの靴には、アッパーがしっかりしていて剛性の高い物と、軽くて屈曲性の良い物の2種類があり、それぞれ性格を異にする靴です。前者の剛性の高い物は、トレッキングシューズに近く、軽くて屈曲性の良い物は、ランニングシューズに近い靴となります。 靴4
剛性の高い方のトレランシューズはソールが硬い物が多く、トレッキングシューズ(軽登山靴)と同様に、舗装路の長距離歩行には向きません。また、ランニングシューズに性格の近いタイプの物は、軽さ志向が強いため耐久性が低く、安定性よりも衝撃吸収性を重視する傾向にあるため、荷物を背負っての歩行には向きません。
ザック
ザック ザックの大きさは、容量(リットル)で示されます。宿を利用する歩き遍路の場合、25~35リットルのザックが良いと思います。35リットル超のザックは、それ自体の重さが増すだけですので止めましょう。ザックに関しては、大は小を兼ねないと言えます。
私が使用しているザックは、左写真のゴッサマーギア・マーマーという超軽量ザックです。ザック自体の重さは350gほどしかありません。装備をどれだけ軽量化しても、それを運ぶザックが重ければ無意味です。1000g以下の物を、できれば600g以下のザックを探すようにして下さい。
なお、普通のアウトドアショップで600g以下の超軽量ザックを探していると告げると、『超軽量ザックはペラペラの生地で耐久性がない』とか、『その生地で良いのならば既に他のザックもみなその生地になってるはず』とか、『軽くても背負い心地が悪いので重く感じる』とかと言われる場合があるかもしれません。
そもそも昨今のウルトラライト(超軽量)な装備のムーブメントは、数千キロにも及ぶアメリカのロングトレイルを歩くハイカーから生まれたものです。ですから、耐久性は折紙付きです。15kg以下の荷物であれば全く問題はありません。また、日本の山に合わないとの指摘もありますが、それは薮漕ぎをしたり、ロッククライミングを伴うような岩稜帯を歩いた時に引掛けて生地を痛めるとの指摘であり、遍路道には該当しません。そもそも引掛ければ厚い生地でも破れます。何よりも私自身が実際にこれを背負って、日本のあちこちの山を登った上で申し上げている事ですから、心配はないと断言できます。
他のザックが同様な生地を使用しないのは、登山の形態によっては時として30リットルの荷物でも15kgを越える場合があり、そういった装備を背負う場合には、超軽量ザックの構造ではリスクが発生するからです。また、背負い心地・背負い易さに関しても、ザックを含めた装備重量を5kg程度にしようと考えている時に、背負い易いからと言ってザックの自重を1kg増やすのは、ナンセンスだと私は思います。
超軽量ザックは、一般のアウトドアショップや登山用品店ではなかなか入手できません。上記のゴッサマーギアは公式サイト(英語)から入手しました。ご紹介した物は、定価US$140(送料別)、セール時(メール登録すると案内が来ます)にはUS$112(同)になります。海外サイトから購入するのに不安のある方は、国内の専門店でお求め下さい。東京三鷹市のハイカーズデポさん、東京岩本町のムーンライトさん、山形市のディセンバーさんなどで様々な超軽量ザックを購入(通販あり)できます。
30リットル前後の超軽量ザックでオススメできるメーカーは、オリジナルマウンテンマラソン(OMM)、ゴッサマーギア(Gossamer Gear)、シックスムーン(Six Moon)あたりです。そのほかにも、ノースフェイスやマウンテンハードウェアのアタックザック、ホグロフスのデイパックなどに1000g以下のモデルがあります。なお、小型ザックの中には、身長の高い方(背面長の長い方)には合わない物もありますので、購入の際にはご注意下さい。
雨具
私が通し打ちをした時には、54日間の内14日間、雨具を着用して歩きました。しかし、遍路をされる方の中には、雨具を持たずに歩いている方がいらっしゃいます。確かに登山と違って遍路は、シティーウォークと低山ハイクの組合せですので、雨具がなくてもなんとかなりますが、札所を巡るわけですから、ずぶ濡れで寺社を訪れるような事のないよう、雨具は持つべきかと思います。
雨具は、ゴアテックス素材の物が一番と言われて、もう40年近く経ちます。なかなかこれに代わる素材は出て来ない事からもわかるように、今でも雨具を選ぶならばゴアテックス素材の物になるかと思います。
今回私は、モンベルのトレントフライヤー・ジャケット(定価 19,500円)とトレントフライヤー・パンツ(定価 14,500円)を使用しました。この雨具は上下合わせて370gという特筆できる軽さで、以前より気になっていたのですが、山ではなかなか使う気になれず、初めての使用となりました。遍路では充分なスペックだと思います。
ポンチョ  なお、ポンチョ(マント式の物)を雨具として使用されている方を散見しましたが、遍路道の多くは海沿いや山中を通っており、雨と共に強風が吹く場合があります。
左写真は、室戸岬の近くで風雨の中を歩かれているお遍路さんです。このように風が強い時には、ポンチョは、役に立たないどころか風にあおられて危険でさえあります。雨具は、上下セパレートの物を準備して下さい。
なお、雨具のほかに「折りたたみ傘」を携行される事をオススメします。通り雨の時や宿に着いてからの雨具として有用です。
地図
初めて遍路道を歩かれる方は、へんろみち保存協力会の発行する「四国遍路ひとり歩き同行二人・地図編」の最新版を用意して下さい。ページによって方角や縮尺が様々で、日ごろ地図を見慣れている方ほど面食らいますが、残念ながら今のところ、これに代わる地図はありません。
『2万5千図じゃないと俺は分からん!』と、25,000分の1地形図を束にして持ち歩いている方がいらっしゃいましたが、区切り打ちならまだしも、通し打ちの場合は枚数が多すぎて無理ですね。そもそも遍路道の中には、25,000分の1地形図にすら記載されていない道を歩くケースがあります。
「遍路、地図」とインターネットで検索すると、東海出版の「歴史を歩く旅マップシリーズ・四国遍路地図」という全4巻の地図が出てきます。この地図は北が上で、4巻とも縮尺が統一されています(笑)。しかし、大縮尺の大判地図の割には、パッチワークのように遍路ルートが切り接ぎされており、全体像が捉えにくい地図です。また、今は通行できない道なども掲載されており、歩き遍路にとっては実用的ではないと思います。
ザックカバー・防水パック
雨天時、ザック内の荷物を濡れないようにするために防水を考える必要性があります。その防水方法には、次の3つがあります。
(1) ザックの外側にカバーを掛ける
(2) ザック内の荷物を丸ごと袋に入れる
(3) (1)と(2)を併用する
(1)にはザックカバーを使用します。この方法は、ザックが濡れて汚れたり重くなったりするのを最小限にできますが、ザックと背中との隙間から入る雨を防ぎ切ることができないため、強雨の場合にはザック内が浸水します。また、風でカバーがばたつく場合もあります。
(2)の方法は、ザック容量と同様な大きさの防水袋(ドライバッグ)を用意し、その袋に全ての荷物を詰めてからザックに入れる方法です。つまり、荷物はザックと防水袋の2重の包みに入ってることになります。この方法であれば、ほぼ完全に防水する事ができます。袋自体が軽量で、口がしっかりと閉められるものを選んで下さい。
(3)の併用する方法は、ザックも濡れずに完全防水することができますが、ザックカバーと防水袋の両方を携行することになり、数10gですが重くなります。
サブザック(サブバッグ)
通常背負って歩くザックの他に、折りたたんで携帯できる、小さくて軽いザックやショルダーバッグを持参して下さい。
歩き遍路をしていると荷物を一時預けて、札所まで単純往復する事が多々あります。そういった時に納経用品と飲料水だけを持ち運びできるサブザックがあると重宝します。ただし、あくまでも「あったら便利用品」ですので軽量な物を選んで下さい。大きく重い物であれば、携行されない方が正解です。
右で紹介しているザックとバッグは、いずれも重さが70g以下で、畳むと握りこぶし大になります。普通の旅行でも便利に使えますのでオススメです。
ヘッドランプ
ヘッドランプは、道迷いなどで夜間歩行せざるを得なくなった場合の必須のアイテムとなります。「めったに使わないけど持つべき物」ですので必ず携行して下さい。
意外にもヘッドランプを使用して有効だったのはトンネルでした。遍路道には、交通量の多い国道でも歩道のないトンネルがあります。そんな時に車からの視認性を高める目的でヘッドランプを使用すると、点けていない時と比べて、明らかに車の避けてくれ方が変わってきます。お試し下さい。
ヘッドランプは、1,000円以下の物から様々販売されていますが、イザというときに不調では意味ありませんから、信頼できるメーカー製で防水の物を選んで下さい。予備の電池も忘れずに携行しましょう。
右上に紹介しているPETZL(ペツル)のヘッドランプは、携行時に邪魔になるゴムバンド部分が巻き取り式になっているため便利です。小型で非常に軽量ですので、ザックの取出しやすい所に入れて携行して下さい。

装備一覧

基本装備

ザック
雨具
地図
ザックカバー・防水パック
サブザック
ヘッドランプ
参拝用品
納経帳
白衣
菅笠
金剛杖
経本
納札
納札ケース
線香
ローソク・ライター
お賽銭
輪袈裟・数珠・持鈴
さんや袋(巡拝バッグ)
衣類
トップス(上衣)
ボトムス(下衣)
インナー(下着)
アウター(外衣)
その他の衣類
その他
洗面道具
くすり
洗濯用品
携帯電話
カメラ
ICレコーダー
非常用品
お金・カード
装備品一覧表(pdf)
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