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歩き遍路にオススメの季節

区切り打ちであれば、気候の良い時だけを選んで歩く事ができますが、約2ヶ月間に及ぶ通し打ちの場合には、どの季節に歩くのか迷うところです。

まず、防寒着などの荷物が増え、場所によっては雪中歩行となる可能性がある1月と2月は外しましょう。更には、梅雨と猛暑、虫やマムシとの戦いが待っている6月、7月、8月、9月も避けた方が良いと言えます。よって、3~5月か10~12月が歩き遍路に適した季節となるわけです。一方で不適とされている時期は歩いている方が少ないため、静かにお遍路をされたい方には、適している季節とも言えます。

都市名 最高気温の平年値
3月 4月 5月 10月 11月 12月
徳  島 13.8℃ 19.4℃ 23.6℃ 22.8℃ 17.5℃ 12.5℃
高  知 15.9℃ 20.8℃ 24.4℃ 24.5℃ 19.3℃ 14.3℃
松  山 13.9℃ 19.4℃ 23.6℃ 23.3℃ 17.8℃ 12.6℃
高  松 13.4℃ 19.5℃ 24.1℃ 22.8℃ 17.2℃ 12.1℃
札  幌  4.0℃ 11.5℃ 17.3℃ 16.2℃  8.5℃  2.1℃
東  京 13.3℃ 18.8℃ 22.8℃ 21.8℃ 16.9℃ 12.4℃
福  岡 14.4℃ 19.5℃ 23.7℃ 23.4℃ 17.8℃ 12.6℃

3月に1番札所霊山寺をスタートして、4月に88番札所大窪寺にゴールする場合、あちこちで桜の花の下を歩くことになるでしょう。しかし、まだ11番札所藤井寺から12番札所焼山寺までの山道には雪が残っている場合がありますし、45番札所岩屋寺のある久万高原や60番札所横峰寺でも寒いことが予想されますので、ダウンジャケットやフリースなどを携行するようにして下さい。スタート時点でのトップスは、長袖シャツ+白衣が適していると思います。

同様に4月にスタートして5月にゴールする場合、4月になると日中の気温は上がってきますので、高知県に入る頃には半袖で歩ける陽気になっていると思います。とても歩きやすい時期ですが、真ん中にゴールデンウィークを挟んでいますので、その期間の宿の確保がポイントになります。早目に予約をするように心掛けて下さい。なお、6月初旬には梅雨入り(四国の平年記録は6月9日頃)しますので、5月中には結願できるようプランして下さい。スタート時点でのトップスは、半袖シャツ+アームウォーマー+袖なし白衣が適していると思います。

同様に10月にスタートして11月にゴールする場合、この時期で心配なのは10月の残暑と台風です。下表のように、台風の接近は年によってバラつきがあります。運よく台風に合わずに11月中に結願できれば、寒い思いをすることもなく、美しい紅葉の中を歩く遍路となることでしょう。スタート時点でのトップスは、半袖シャツ+アームウォーマー+袖なし白衣が適していると思います。

同様に11月にスタートして12月にゴールする場合、台風のリスクがなくなりますので、予定通りに遍路ができる季節となります。しかし、12月に入るとガクッと気温が下がりますので、ダウンジャケットやフリースなどの防寒着を用意しなければなりません。年によっては久万高原や横峰寺では雪の中の歩行となる場合があります。また、日の短い時期ですので行動時間が制約されます。余裕のあるプランにして下さい。スタート時点でのトップスは、長袖シャツ+白衣が適していると思います。

年 四国地方への台風接近数
3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
2014 1 1 2
2013 2 1
2012 1 1 1
2011 1 1 2
2010 1 1
2009 1 1
2008 1
2007 1 1
2006 2 1
2005 1 1
2004 2 1 3 2 2
2003 1 1 1
2002 1 3
2001 1 1

上2つの表のデータは、気象庁のデータベースより引用しました。

グーグルマップを使ってみよう

初めて遍路をされる方が、遍路地図(四国遍路ひとり歩き同行二人・地図編/へんろみち保存協会発行)だけを頼りに歩くと100%道に迷います(笑)。『迷うのも修行のうち』らしいのですが、2,500円もする地図なのですから、版を改訂される時には、せめて新設道路くらいは更新して欲しいものです。もし、あなたが、これまで道に迷ったことなどなく、初めて訪れた地でも天性の勘で歩く事ができる卓越した方向感覚の持ち主でしたら、遍路地図を見ずに歩かれた方が、道に迷う事はないと思います。

遍路道沿いには、多くの遍路シールや道標が設置され、進むべき道を示してくれています。郊外の道や山中の道では、これらの目印を見落とさない限り、道に迷う事はないと思います。しかし、都市部では設置の制約上、遍路シールや道標が少なくなり、道迷いの可能性が高くなります。また、高知市以降の都市部で、現地の方に遍路道について尋ねても分かっている方はごく少数で『迷ったら人に聞こう』というのが、後半になるにつれて段々と通用しなくなります。そんな時に助けてくれたのが、グーグルマップでした。

グーグルマップは、スマートフォンで利用できるアプリケーションです。電波が届いている限り、ほぼ正確に現在自分がいる地点を地図上に示してくれますし、次に向かう目的地までの歩行経路を検索することもできます。前述の通りに、道迷いが発生する個所は、都市部がほとんどですので、電波が届かないという心配もなく、利用価値は高いと思います。

遍路に出るにあたり、準備の一環として、グーグルマップの使い方をマスターして下さい。必ず、道中で助けになると思います。なお、グーグルマップの使い方については、ご家族や携帯電話ショップ等でご確認下さい。自力で覚えるという方は、下記のサイトを参考にされて下さい。

  ■ グーグルマップ・アプリのインストール(参考) ※スマートフォン用のサイトです

  ■ グーグルマップの使い方 -基本編-

ローソクと線香の補給

初めてお遍路を歩いた時、『どうせ参拝するならば、ちゃんとローソクや線香をあげよう』と考え、かなりの量のローソクと線香を携えて、1番札所をスタートした記憶があります。しかし、荷物の軽量化を考えると、必要最低限の数量を携行し、途中で補給するのが良い方法だと思います。

1ヶ所の札所でローソク2本、線香6本使用します。88ヶ所の札所だけを考えても、ローソク176本、線香528本必要です。通し打ちをする場合であっても、まさかその量全部を持って行くわけにいきませんよね。

すべてではありませんが、多くの札所では、ローソクも線香も販売されています。しかし、ビックリするほど値段が高い!そりゃ、100円ショップで売られている物と比類ないほど良質な物なのでしょうが、私にはそこまでの差がわかりません(笑)。

遍路道は、市街地に入ってからも旧道を通っている場合が多く、ローソクや線香が安価で入手できる100円ショップやホームセンターになかなか出会いません。そこで、下記のようなプランを作成してみました。この補給プランは、当サイトのおすすめプランで歩いた場合に準じたものです。通常では通過しない施設(例えば、コーナン高知駅前店など)も含まれていますので、ご注意下さい。

なお、四国では、ホームセンターならば「ダイキ」「コーナン」「コメリ」、100円ショップは「ダイソー」「セリア」を多く見かけましたので、事前にホームページ等で場所を確認されておくのも良いかもしれません。

補給地点 ローソク 線香 注釈
出発時の携行数 20本 60本 携行数は、札所のみの最低数です。実際には、番外札所や奥ノ院等でも使用しますので、20%ほど増しでの携行をオススメします。左記携行数は、1~10番札所で使用する分です。
吉野川市鴨島
(遍路地図12-2)
14本 42本 出発時の携行数は10番札所までで使用し、11番札所手前の鴨島で、ローソク14本と線香42本を補給するというプランです。ダイキ・鴨島店さんで購入できます。左記補給数は、11~17番札所で使用する分です。
徳島市内
(遍路地図18-1)
12本 36本 ダイソー・キョーエイタクト店さんで購入できます。遍路地図18-1の県道30号線沿い、ショッピングプラザ・タクトキョーエイ内です。左記補給数は、18~23番札所で使用する分です。
海陽町
(遍路地図24-3)
20本 60本 コメリ・海陽店さんで購入できます。遍路地図24-3詳細図Bの国道55号線沿い、海南郵便局の手前になります。左記補給数は、24~33番札所で使用する分です。
高知市内
(遍路地図32-1)
20本 60本 コーナン・高知駅前店さんで購入できます。通常の遍路ルートから外れます。通常ルート上では35番札所手前の土佐市街まで購入できません。左記補給数は、34~43番札所で使用する分です。
大洲市内
(遍路地図54-1)
16本 48本 ダイソー・大洲駅前店さんで購入できます。遍路地図54-1詳細図Aのビジネスホテルオータさんの向いです。左記補給数は、44~51番札所で使用する分です。
松山市内
(遍路地図60-1)
16本 48本 ダイソー・JR松山駅店さんで購入できます。おすすめプランでは松山駅を利用しますが、通常の遍路ルートからは外れます。左記補給数は、52~59番札所で使用する分です。
西条市小松町
(遍路地図66-1)
22本 66本 ダイキ・伊予小松店さんで購入できます。国道11号線沿い、62番札所香園寺の近くです。左記補給数は、60~70番札所で使用する分です。
三豊市豊中町
(遍路地図74-1)
18本 54本 セリア・ゆめタウン三豊店さんで購入できます。国道11号線沿い、ゆめタウン三豊2Fです。左記補給数は、71~78番札所で使用する分です。
坂出市内
(遍路地図76-2)
20本 60本 セリア・イオン坂出店さんで購入できます。坂出駅近くのイオン坂出店(遍路地図ではサティのままになってます)内です。左記補給数は、79~88番札所で使用する分です。

上記以外で補給しやすいのは、安芸市内(遍路地図30-1)、香南市内(遍路地図30-3)、土佐市内(遍路地図36-1)、須崎市内(遍路地図36-2)、宿毛市内(遍路地図46-2)、宇和島市内(遍路地図51-1)、今治市大西町(遍路地図62-2)、高松市内(遍路地図80-1)です。

歩くということ ウォーキング指導員の視点から

歩くということは、学ばすとも誰もができる運動です。しかし、歩くということのメカニズムを科学的に理解し、実践するとなると、とても難しい運動だとも言えます。同じ歩き方ということだけでも、語られる方がランナー出身だったり、競歩出身だったり、登山出身だったりで全く違ってくることからも、そう言えるかもしれません。
スピードウォーク(時速5km以上の歩行)を目的としたウォーキング指導の現場では、下図のように「踵着地(ヒールストライク)」をして「大きく腕を振る」ようにお話ししています。この歩行スタイルのベースは競歩になります。
下図は、遍路にも応用できる歩行姿勢に見えるのですが、歩き遍路の場合は、背中に5~10kg程度の荷物を背負っており、バランスを取るため「立脚中期」にやや前傾姿勢になっている方が多く、その姿勢から、つま先で蹴り出すと「遊脚中期」では、より前傾姿勢となってしまいます。そして、次の動作でそのまま踵から接地をすると、前傾姿勢により必要以上に前方向へ動き出していた身体を、接地と同時に無意識に制動する事となり、足首と膝に通常よりも衝撃が掛ることとなります。
歩行分析図
このような場合、踵着地(ヒールストライク)を止めて足裏全体で着地(フラットフット)するように心掛けてもらうと、前傾姿勢になっていても接地時に制動が掛りにくくなるため、足首や膝への衝撃が緩和されます。膝に不安がある方や、20kg以上の重い荷物を背負っている場合などには、適した歩き方といえます。じゃあ、歩き遍路の誰もがフラットフットで歩くと良いのかというと、そう単純ではないのです。
歩き遍路は、連日30km前後の歩行を繰り返します。そのような、長距離連続歩行の場合は、省エネ歩行という観点も身体をいたわるという意味から重要になってきます。例えば、70cmの歩幅で1km歩くと1,428歩です。同じ人が5cm伸ばして75cmの歩幅で歩けたら、1kmは1,333歩で済むことになります。1kmで95歩、30kmで2,850歩、約2km相当の省エネ歩行をした事になるわけです。歩き方で歩幅を伸ばせるとしたら、無意識で歩いているのと比べて、疲労度はかなり違ってきますし、それが40~50日間に及ぶわけですから、無視できないわけです。
歩幅を伸ばす方法は、一直線上を歩くイメージで、腰をスイングしながら踵で着地する歩行スタイルを身につける事です。腰を回転させることでより遠くに足を投げ出し、更に膝を伸ばして踵から着地することで歩幅を稼ぐわけです。こうすることで歩幅が伸び、リズミカルに歩くことで歩行速度も増してきます。一方でフラットフットを意識して歩くと、通常歩行時よりも歩幅が狭くなり、歩行スピードもなかなか上がりません。つまり、フラットフットは効率の良い省エネ歩行には向かないわけです。
しかし、ヒールストライクは、歩幅を伸ばすことはできても、時には足首や膝に負担を掛けるという、諸刃の剣です。そのことから声高に『踵着地で歩くことは身体に良くない』と言われる方もいるほどですが、それを最小限に防ぐ方法があります。それは、誤った靴選びをしないことです。
靴写真
上の左写真の靴は、最近購入したアシックスのトレランシューズ(トレイルランニング用の靴)です。私は、これで日帰りで行ける山を歩いています(トレラン自体は引退してますが…)。荷物が少なく軽快に山を巡りたい時には重宝する靴です。右写真の靴は、主に舗装路での長距離歩行時に使用しているミズノのウォーキングシューズです。この靴は、私が通し打ちをした時に利用したものです。
この2つの靴は共にとても歩きやすい靴ですが、上写真のようにソールの形状が異なります。ウォーキングシューズは、ヒールストライクをするという前提で、ソールの踵部分が斜め上にカットされ、踵着地した時に安定するようにアッパー部分も補強されています。一方で、フラットフットを前提としたトレランシューズやトレッキングシューズ(軽登山靴)の多くは、ソールが平らに作られています。この2つの靴で、舗装路をスピードウォークしてみると、ウォーキングシューズとトレランシューズとでは、ヒールストライクをした時に足首や膝に掛る負担がかなり違うのがわかります。
人間は特別に意識しない限り、上図のように踵から着地する歩行スタイルとなります。特に平坦路でスタスタ歩こうとスピードを上げるほどヒールストライクする傾向になります。これが自然なスタイルなのですから、無理にフラットフットで歩くよう意識するよりも、ヒールストライクで歩いても負担の掛らない靴選びをすることが重要なことだと思っています。特に若い時に比べて筋力が低下し、足が安定しにくくなってきている中高年の方は、靴選びを慎重になされて下さい。
そして、前屈みにならないよう遠くに視線を向けて、背筋を伸ばし、足を大きく振り出して踵着地をして歩幅を伸ばし、一定のリズムで軽快に歩き続けることが、遍路道の大部分を占める平坦な舗装路での適した歩き方だと考えています。
■追記(ご質問をいただきましたので、追記します)
未舗装路、特に勾配のある山道では、足を肩幅に開き(がに股で…)歩幅を狭くして、安定感のある姿勢でフラットフットで着地するのが基本の歩行スタイルとなります。

奇跡の掛け連れ

遍路の中で偶然に出会い、他人同士が連れ立って歩くことを「掛け連れ」と言うそうです(出典 / 掬水へんろ館)。 M氏写真 
私は、7日目の宿で地元四国のM氏(右写真)と出会い、8~16日目と33~54日目を一緒に歩き、同じ宿(部屋は違います…笑)に泊まりました。それは、遍路旅56日間の過半数に当たる31日間にも及びます。16日目に1度別れたのは、私が高知市で2日間の休足日を設けたためで、これがなければ、より多く一緒に歩いていたと思います。
歩き遍路というギリギリの環境の中で、他人とペースを合わせて歩くという事は、時に負担となることもあるかもしれず、遍路を綴ったブログなどでも『一定の距離感を持って付かず離れず歩きました』等の記述を多く目にしました。
しかし、少なくとも私は全くストレスを感じることなく、M氏に同行させていただく事ができ、遍路旅がよりかけがえのない思い出となりました。こんな奇跡とも言える出会いができるのも、歩き遍路の魅力ですね。

通し打ちとは

ホームページタイトルの下にも書かせていただいているように、私は2012年に「通し打ち」をしたという認識を持っています。しかし、私のような巡礼形態は「通し打ち」にはならないとの指摘もあります。「通し打ち」は、いわゆる「乗り物断ち」をして、88ヶ所の札所を歩かなければならないとの意見です。これでは、たとえ前日歩き終えた所へ戻ってから歩き始めたとしても、宿の送迎車を利用したりしている私は、「通し打ち」にならないわけです。

一方で遍路には「全部歩き」と「一部歩き」という分け方もあります。「一部歩き」とは、札所のない区間を列車やバスで移動して、歩きつなげる回り方です。「乗り物断ち」をしなければ「通し打ち」に当たらないとなると、「一部歩きの通し打ち」なんてのは、あり得ないわけです。

また、現在のように大河に橋の掛けられていない時代、川は舟で越えていました。澄禅著「四国辺路日記」や真念著「四国邊路道指南」にも渡し舟の記載が多く見られ、遍路でも一般的に利用されていたようです。「乗り物断ち」が正しい「通し打ち」だと考えると、その時代、大河を泳いで渡らなければならなくなっちゃうわけです。

屁理屈を述べるつもりも、自分の行為を正当化するつもりもありませんが、一般論として「遍路中に(四国以外の)自宅に戻らずに一気に88ヶ所の札所を参拝すれば、通し打ち」と言う事で良いのではないでしょうか。ですから、マイカーでの「通し打ち」や、ツアーバスでの「通し打ち」だって、あって然るべきだと私は思っています。

五色台の遍路ルート

白峯寺と根香寺のある五色台は、香川県の中央部にある標高300~400mの峰が連なる溶岩台地です。
現在、国分寺から白峯寺・根香寺と巡る遍路道(右図の赤実線ルート)が設定されていますが、このルートができるまでには変遷があったようです。
ルートマップ     
右図は、五色台周辺図です。遍路地図では78-1に当たります(遍路地図は南が上になっているので、天地が逆になっています)。図中の( )は、遍路地図上の表記です。

「四国邊路道指南」の白峯寺までの道の記載は、 
  是よりしろミね寺迄五十町。
  坂有国分坂といふ、谷川あり。
  河野郡南青海村。
 (訳)
  国分寺から白峯寺まで50町です。
  国分坂があり、谷筋を通ります。
  そして、河野郡青海村に至ります。
真念が訪れた頃の国分寺から白峯寺に至る「国分坂」と言うのは、右図の赤実線の道ではなく青点線のルートになります。この青点線ルートには、古くからのへんろ石も確認されています。
しかし、明治になって旧陸軍の第11師団が善通寺に創設されて以降、五色台に広大な演習地(右図の紫色エリア)が作られ、青点線の遍路道は通れなくなり、赤実線の現ルートが新しく作られました。現在の国分坂は、とても新しい道なんです。

一方で、国分坂が「遍路ころがし」と言われている急坂のため、江戸時代の後半には、79→81→82→80番札所と巡るルートが盛んに利用されました。十九丁には、根香寺から打ち戻って国分寺へ向かうという道標も残されています。

現在も旧国分坂は、自衛隊の国分台演習場に分断されているために歩くことができません。また、新しく作られた一本松に至る坂も急峻であることに変わりありませんから、79番札所から松浦寺を経て白峯寺に至り、根香寺から十九丁に打ち戻って国分寺へ下るルートをもっと利用されてはいかがでしょうか。松浦寺のある高屋地区には、崇徳天皇ゆかりの地が多くあり、見どころにも事欠きません。

横峰寺へのルート

60番札所横峰寺に登る道は、旧来より石鎚山への登山道として利用されてきた、「湯浪ルート」と「岡村ルート」の2つがあるとされています。
「湯浪ルート」は、遍路地図64-3にある、生木地蔵→大頭バス停→妙雲寺→湯浪→横峰寺と辿るルートです。
  1687年に発行された真念著「四国邊路道指南」によると、横峰寺までの道は、次のように記載されています。
    生木地蔵。新田村川有。
    大戸村、此所に荷物おき行。よこミねへ二里。
    ゆなミ村、地蔵堂有。ふるほう村、地蔵堂。大戸より山路、谷合。
     (中略)
    横ミね寺より、香苑寺へ筋向道、教る人多し、
    益なし。右の大戸へもどるをよしとす。
   (訳)
    生木地蔵から新田村へ向かうと川があります。
    大戸村(今の大頭)に荷物を置いて横峰寺に向かいます。横峰寺までは2里です。
    湯浪村と古坊村には地蔵堂があります。大戸からは山道となり、谷筋を通って行きます。
     (中略)
    横峰寺から香園寺までは、直通道を教える人が多いが、
    便利ではないので、大戸へ戻る方が良い。
同様に、1800年に発行された「四国遍礼名所図会」でもこのルートを利用して、大頭に打戻るように記載されています。横峰寺の険しい登りを考えた時、登りと下りに違う道を選び荷物を持って歩くよりも、荷物を預けて同じルートを打戻ってくる方が楽で便利と考えるのは、現世の歩き遍路と変わりありませんね。

一方の「岡村ルート」は、以前の遍路地図(第6版までは掲載されていたらしい…)には載っていたようですが、現在は掲載されていません。道が荒れた等の理由があったのでしょうが、私が実歩した2012年12月の時点では、とても良く整備された道でした。前述の「湯浪ルート」と比べても距離が短く、現状では最もオススメできるルートだと思います。
この「岡村ルート」は、横峰寺の前札所である清楽寺を起点に香園寺を経由して、旧小松町岡村地区を通り、松山道石鎚山SA付近で本山林道に入り、常盤採石場に至ります(下図参照)。
採石場からは、しばらく林道を進み、小川を渡った所で林道を離れ山道に入ります。杉林の中をつづら折りに登り詰めて、白滝奥ノ院へ通じる道と合流します。
この合流点には、昭和初期に建てられたへんろ石(岡村経由で香園寺まで1里20丁、白滝経由で香園寺まで1里16丁と書かれてます)と、四国のみちの道標(60番横峰寺まで3.6km、香園寺奥の院まで3.3kmと書かれています)があります。また、この場所を地元では「おこや」と呼んでおり、昭和初期までは茶屋があったとの記録が残っています。
歩き遍路の方が多く利用されるビジネス旅館小松さんでは、宿泊された方に緑点線ルートから「岡村ルート」に合流するコースの説明をして簡易地図を配布されています。結果として、遍路地図に掲載が無くなった今でも、一定数の方々が四季を通じてこのルートを歩かれています。
小松旅館さんから出発する方も、少しだけ香園寺方面へ進み、下図を参考に旧来の遍路道を辿って採石場まで歩いてみていただければと思います。

なお、白滝奥ノ院を通るルートは、奥ノ院自体が昭和8年に作られた事から考えても、「湯浪ルート」と「岡村ルート」と比べて新しい道と言えます。主に横峰寺から香園寺へ至る下り道として利用されています。
ルートマップ ルートマップ
ルートマップ ルートマップ
上の地図は「ゼンリンの利用規定」により4分割になっています
参考/愛媛県生涯学習センター編「ふるさと愛媛学」調査報告書

携帯電話の電波状況

私は、auのスマートフォンを持って遍路道を歩きましたが、携帯の電波が全く入らなくて困った所は、ほとんどなかったと記憶しています。山登り中は携帯を見ている余裕がなかった・・・場合もあります(笑)。ただし、2012年当時のauは、足摺岬周辺の一部と久万高原周辺、特に宿泊した古岩屋荘では電波がとても微弱で、毎日更新していたブログがこの日だけは公開できませんでした。

出発前に拝見した某個人サイトでは、遍路道ではauの電波が一番良いとの記載を見ましたが、ほぼ一緒に歩いたM氏がdocomoのスマートフォンを使用していて、上記のauが通じないエリアでもdocomoはつながっており、印象としては遍路道ではdocomoが一番電波が良いと感じました。

金剛福寺から延光寺へのルート

足摺岬にある「38番札所金剛福寺」から、宿毛市の「39番札所延光寺」までのルートは、遍路道の中で最も多くの選択肢がある、どのルートを歩くか迷うエリアです。下図にあるように遍路地図には、6つのコースが記載されています。

ルートマップ
① 地蔵峠コース(遍路地図記載名/市ノ瀬上長谷真念道経由) 区間距離51.6km、区間最高標高240m
  1687年に発行された真念著「四国邊路道指南」によると、
    是より寺山迄十二里。右の真念庵へもとり行。
    なり山村。おほかめうち村、是迄山路渓川。
    上ながたに村しるし石有、いにしへハ左へゆきし。今ハ右へゆく。大水の時ハ左よし。
    ゑの村川有、水いつる時ハ村の者、庄屋并村翁遍路をたすけ渡す。
   (訳)
    金剛福寺より延光寺まで12里あります。まず、真念庵まで戻ります。
    真念庵から成山村・狼内村までは、渓流沿いの山道になります。
    上長谷村に標石があり、昔は左へ行ったが、今は右の道へ行きます。ただし、増水時は左が良いでしょう。
    右へ行った江ノ村には川があり、増水時には庄屋や村の老人が、遍路を助けて川を渡してくれます。
  このように、金剛福寺から延光寺までのコースが紹介されています。
  このコースは、成山峠と地蔵峠の2つの峠越えがあります。地蔵峠の下りには、旧遍路道が復元されています。
  真念庵と金剛福寺間の片道27kmを打戻るため、同じ道を歩くこととなり少々退屈かもしれません。
  しかし、歴史的には最もスタンダードな道であり、1度は歩いてみたいコースです。おすすめ度★★★★
② いにしえコース(遍路地図記載名/市ノ瀬三原経由) 区間距離50.8km、区間最高標高179m
  上記に『大水の時ハ左よし』と記載のある、上長谷の真念石を左(今は直進)へ行くコースです。
  地蔵峠を回避するルートとなりますので、歴史と体力のバランス(笑)が良いルートかもしれません。
  しかし、①と同様に長大な単純往復をしなければなりません。おすすめ度★★★
③ 芳井コース(遍路地図掲載名/下ノ加江三原経由) 区間距離52.8km、区間最高標高140m
  旧来の遍路道ではありませんが、アップダウンが少なく距離も短いことから、最も人気のあるコースです。
  多くの遍路仲間と楽しく歩きましょう。おすすめ度★★
④ 今ノ山コース(遍路地図掲載名/益野今ノ山経由) 区間距離53.1km、区間最高標高646m
  たぶん、車遍路用に紹介されているルートなんだと思いますが、このルートを記載した地図を、ある遍路宿が
  歩き遍路に配布しているせいか、中には今ノ山を越える方もいらっしゃるようです。
  打戻りは絶対に嫌で、遍路仲間よりも野生の猿に会いたいというマニアな方に…。おすすめ度★
⑤ 下切コース(遍路地図掲載名/益野今ノ山経由) 区間距離62.2km、区間最高標高250m 
  このコースも車遍路用のルートですね。さすがに歩き遍路が選ぶ理由が見当たりません。
⑥ 月山神社コース(遍路地図掲載名/月山神社宿毛経由) 区間距離72.5km、区間最高標高100m
  遍路地図には、次のような記載があります。
   【遍路修行の道】
   古来、金剛福寺を打ち終えた遍路は、次のいずれかの道程を選ぶことを不文律としてきたと伝えらてれる。
    1 打ち戻って延光寺から篠山詣りをする。
    2 月山詣りを終えて延光寺を打つ。
  初めての遍路の際、この文章を見つけた時の衝撃を今も覚えています(笑)
  それまでは、荷物を置いて身軽に金剛福寺を往復し、翌日に延光寺を目指そうと思っていたのですから…。
  慌てて「篠山ってどこ?」と地図をめくりました。そして結果的には、月山詣りの方が楽だと知ったのでした。
  多くの方が③コースの52.8kmと、このコースの72.5kmを比較して、打戻りのコースを選ばれているようです。
  しかし、その20kmは、遍路全行程1100kmのわずか1.8%にしか過ぎません。
  加えて、足摺岬西岸から月山神社までの黒潮に洗われる海岸線は、四国の見どころの1つでもあります。
  ルートチョイスにお迷いでしたら、このコースを強くオススメいたします。おすすめ度★★★★★
【付記】参考までに「四国邊路道指南」には、このような記述もあります。
   初遍路ハさヽやまへかけるといひつたふ。
    (訳)初めて遍路では、篠山詣りをするべきと言い伝えられている。

法海上人堂の場所

「23番札所薬王寺」から「24番札所最御崎寺」までの途中、番外札所の「明徳寺」と「佛海庵」までの間(遍路地図24-4)は、室戸岬をはるかに見ながら歩く海沿いの道です。この間は自販機1台なく、歩き遍路にとっては困難な道のり(1巡目歩き遍路記録11日目)の一つです。

「明徳寺」から「佛海庵」までの約11kmの間には、「ゴロゴロ休憩所」「法海上人堂」「ヨドイソ休憩所」の3つの休憩可能なポイントがありますが、遍路地図の第9版には記載がなく、第10版の「法海上人堂」の記載位置も間違っているため、下記の通りに修正します。

なお、遍路地図(24-4)をスキャンして正しい位置をプロットし直すのが、ご覧になっている方には1番分かりやすいかとは思いますが、諸般の事情により、遍路地図と方位を合わせて新たに地図を作成しました。

マップ

上記の地図を下記に2分割して拡大しています。遍路地図に転記してご利用ください。

マップ マップ
「ゴロゴロ休憩所」 北緯 33° 29'12.18" 東経 134° 15'28.58" (WGS84)
  北緯 33° 29' 0.11" 東経 134° 15'38.23" (Tokyo)
       
「法海上人堂」 北緯 33° 27'45.80" 東経 134° 14'27.86" (WGS84)
  北緯 33° 27'33.72" 東経 134° 14'37.50" (Tokyo)
       
「ヨドイソ休憩所」 北緯 33° 26'17.72" 東経 134° 14' 2.48" (WGS84)
  北緯 33° 26' 5.63" 東経 134° 14'12.12" (Tokyo)

徳島駅から各札所への交通機関

朝夕の時間帯は、JRより路線バスの方が本数が多い場合がありますので、スケジュールを組む際にはバスも考慮されて下さい。下記の所要時間は、徳島駅(徳島駅前バスターミナル)からの時間です。 なお、運賃は2013年7月時点の金額です。

1番札所 霊山寺 JR高徳線 板東駅下車(所要時間18~31分、運賃260円)、駅から0.9km
  徳島バス 大麻線 霊山寺前バス停下車(所要時間39分、運賃390円)、バス停は門前
   
2番札所 極楽寺 JR高徳線 阿波川端駅下車(所要時間20~38分、運賃260円)、駅から1.1km
   
3番札所 金泉寺 JR高徳線 板野駅下車(所要時間25~42分、運賃350円)、駅から0.7km
徳島バス かじや原線 板野南バス停下車(所要時間40分、運賃440円)、バス停から0.8km
   
4番札所 大日寺 徳島バス かじや原線 大日寺口バス停下車(所要時間53分、運賃570円)、バス停から1.2km
   ※かじや線「あすたむらんど経由便」のみ「大日寺口バス停」を通ります
   ※「あすたむらんど経由便」は本数が少ないので「羅漢バス停」を利用するのがベターです
   
5番札所 地蔵寺 徳島バス かじや原線 羅漢バス停下車(所要時間47分、運賃570円)、バス停から0.4km
   
6番札所 安楽寺 徳島バス かじや原線 東原バス停下車(所要時間57分、運賃660円)、バス停から0.6km
   
7番札所 十楽寺 徳島バス かじや原線 東原バス停下車(所要時間57分、運賃660円)、バス停から1.7km
   
8番札所 熊谷寺 徳島バス 二条・鴨島線 二条中バス停下車(所要時間64分、運賃650円)、バス停から3.1km
   
9番札所 法輪寺 徳島バス 二条・鴨島線 二条中バス停下車(所要時間64分、運賃650円)、バス停から1.7km
   
10番札所 切幡寺 徳島駅-(JR徳島線)→学駅-(市場交通バス)→市場-(徒歩)→切幡寺
  市場交通バス 学線 市場バス停下車(学駅から12分、運賃250円)、バス停から3.2km
   ※市場交通バスについては阿波市のホームページにて検索して調べて下さい
   
11番札所 藤井寺 JR徳島線 鴨島駅下車(所要時間29~44分、運賃440円)、駅から2.8km
   
12番札所 焼山寺 徳島バス 神山線 寄居中バス停下車(所要時間69分、運賃1,000円)、バス停から7.9km
   ※寄居中バス停から先、焼山寺バス停まで、神山町営バスが1日3便運行しています
   ※焼山寺バス停は遍路地図14-1のすだち館近くです。ここから焼山寺までは3.4kmです
   
13番札所 大日寺 徳島バス 神山線(名東・延命経由) 一の宮札所前下車(所要時間29分、運賃400円)、バス停は門前
   
14番札所 常楽寺 徳島バス 神山線(延命経由) 常楽寺前バス停下車(所要時間23分、運賃350円)、バスから0.3km
   
15番札所 国分寺 徳島バス 神山線(延命経由) 国分寺前バス停下車(所要時間23分、運賃350円)、バスから0.4km
   
16番札所 観音寺 徳島バス 神山線(石井北岸経由)観音寺北下車(所要時間20分、運賃290円)、バスから0.4km
   
17番札所 井戸寺 徳島バス 覚円線(日開経由) 井戸寺口バス停下車(所要時間17分、運賃290円)、バスから0.3km
   
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